- 2017-5-24
- Body&Health
2000年代はじめの芸人ブームのさなか、白い体操着姿で「あ~い! あ~い! ん~!」と胸を叩くギャグでブレイクしたピン芸人・パッション屋良さん(40)。
11年に活動拠点を故郷の沖縄に移して芸人として活躍中。さらに17年春には自身のパーソナルトレーニングジム「Passion’s Fitness 【PPP】」を立上げた。ついにパーソナルトレーナーとして一本立ち。今は芸人兼トレーナー、そして実業家でもあるパッションさんにジムのこと、体作り、沖縄でのカッコいい男などを聞いた。インタビュアーは、芸人としては先輩の沖縄在住の作家・松野大介氏。
ジム立上げのきっかけは20キロの激太り?
松野:今日はよろしく頼みますね。まずは自分のジムを開くまでの経緯を教えてください。
パッション屋良さん(以下パッション):もともとは知り合いが始めた、個別に指導するジムの立上げの時に「手伝ってください」て言われたのが最初。僕は芸人の仕事が減って6年前に沖縄の名護に戻ってきていた。2人だった子供が4人に増えたり、お笑いのでかいイベントを企画したらお客が入らず借金背負ったりで生活が苦しく、ストレスがひどくて、20キロ太りました。MAXで100kgはあったかな。
自己流ダイエットでは体重が減らなかったから、「本当にジムの指導で痩せるのか?」と興味があって、モニターという形でそのジムに通って試してみた。僕は大学まで陸上やってたし、体育教師の資格もとっていたけど、僕の知ってる理論とはまったく違うやり方で、見る見る体が変わった。
松野:そのジムのやり方は理に適ってた?
パッション:適ってましたね。動ける筋肉作りと痩せる体作りとに目的に合わせてやり方を変えますし。“すごいなぁ・・・”と思ってそこのジムのトレーナーになったんです。それがまだ2年前。最初はバイト感覚だったけど、芸人だけじゃメシ食えなかったし、たくましい体を作れば芸人の仕事にも生きてくると考えて本格的にやるようになった。大学時代に体育教師の資格を取っていたことも大きかった。僕は20キロ落としたままでずっと体重をキープしてます。
松野:トレーナーが太ったら信憑性がないしね。
パッション:ははは。働くうちにクライアントさんも増えてくれて。お笑いの仕事はお客さんに「おもしろかったぁ!」と笑ってもらうことだけど、トレーナーも「体が変わった! ありがとう」とお客さんを笑顔にするのは同じ。“おもしろい仕事だなぁ”と思えました。仕事とかで悩んでいたり、心が疲れ気味だった人もいらした。3ケ月後「体が変わった! うれしい」と明るく喜んでくれた。ジムはあくまでも身体を変えることが目的ですが、トレーニングすることでアドレナリンも出るし、その結果、心も元気になることもあるんですね。
松野:ジムで2年働き、つい最近の17年4月に独立したわけですが、独立の動機は?
パッション:自分の手ですべてやってみたかったのと、ひとりのクライアントさんに対してもっと力を注げる内容にしたいなと。以前は3ケ月間でメニューが終わりでしたが、痩せた体を維持するのが難しい方もいるので、ずっと奇麗で元気な体でいられるように継続して見てあげたい。「あんなことやりたい、こんなことやりたい」とアイディアもいろいろありましたし。
名前はパッションズ・フィットネス(Passion’s Fitness)でPPPと覚えてください。
松野:PPAPのパクリ?(笑)
パッション:ガハハ。違います! パーソナル(Personal)フィジカル( Physical )プランニング(Planning)です。地元の名護で、2LDKのお洒落なマンションに必要なマシーンを置いてます。前のジムから引き続き来てくれるお客さんもいますよ。
沖縄のメタボ事情と、ダイエットに必要なこと
松野:沖縄はメタボな人が多いと県内で問題視されている。インタビューの機会にパッション流ダイエットをチラッと教えていただきたいです。
パッション:沖縄だとお酒もたくさん飲むし、ご飯も脂っこいものが多いし、お酒のあとに山羊とか食べるし。それでいて歩かない。東京だと1日に1万歩はふつうに歩くけど。
松野:東京は同じ駅なのに乗り換えでけっこう歩くからね。
パッション:沖縄には太る環境が満載なんですよね。みんな車でドア・トゥ・ドア。集まりや行事が多いし、お祝いものはオードブルばかり。暖かい地域って昔は食の保存がきかないから脂っこい料理はどうしても流行るのかなと。魚も揚げるし。何年か前のあるデータでは沖縄の男の45%がメタボとか。平均寿命も落ちてきてる。沖縄だと安心しちゃうんでしょうね。「オレも太ってるけど、おまえも太ってるから、まいっか~」みたいな。でも、一番のおシャレは体作りだと思うので、何か言い訳を見つけてトレーニングやダイエットをしないよりは、やったほうがいい。
松野:私も沖縄に移住してからは、飲む言い訳はすぐ見つけるんだけど(笑)。
パッション:そうなんですね! でもお酒のつきあいがあっても、やれることをやれば健康でカッコよくなれる。カッコよくなるための努力をカッコよくないと思う人もいるけど、僕は痩せた時に「若く見えるね」と言われて嬉しくて、自分を磨くことによって内から出る自信が持てた。その自信があれば人ともいい関係が築けると思う。僕は20キロ太ってから痩せたので、自分の経験したことが一番の教科書になるのかなと。
松野:アラフォーで20キロ落としたのだから、読者はパッション流ダイエットが気になるところだね。
パッション:今はダイエットの情報が氾濫してますけど、食事と運動の2つが1つにならないと体は変わらない。運動だけじゃ痩せないし、食事だけで痩せると筋肉が落ちて結局はリバウンドする。トレーニングはあくまで脂肪を燃えやすくして、痩せやすくするための土台作り。体の反応を出すのは食事以外ない。口に入ったもので僕らの体は形成されるので、食べるものを意識しないと、体は変わらない。あくまで自分の体質に合わせて摂るべきものを意識的に選択することが大事。トレーナーさんでもこう言う方がいますけど「食事制限ではなく“食事選択”だ」って。
松野:なるほど!自分に合った食事を“選択”する。
パッション:それを学んでいくことはそんなに難しくはないです。自己流で1年やって痩せない方はやり方が間違っている。ジムでは1~3ケ月で、こういうトレーニングしてこういう食事選択をすれば自分の体はこう変わるんだって実感してほしい。自分流のノウハウを僕と一緒に見つけましょう。
松野:食事も面も相談にのってくれる?
パッション:もちろん! 基本はご自身が食べているものの中から選択します。「松野さん、ふだんどんなの食べてるの? あ、これとこれは量が多いから減らして」とか。
松野:女性でトレーニングをやりっぱなしの人もいますよね。痩せるために食べない。
パッション:まったく話にならないです。筋肉をつけるためにも、痩せるためにも、食事が必要ですよ。食事なしでは絶対にダメ。
松野:沖縄の長寿の方がたまにテレビで紹介されるけど、畑仕事してたりスポーツしてたり、みんな動いてる。
パッション:本当にそうなんです。動くのと食事。大量に作られたものを食べるより、自分に合ったものを意識して摂っていく時代になってきたのかなと。
ジムと、体作りについて
松野:ジムにはどんな方が来られますか。
パッション:個別のジムに来られる方には、大人数がいるジムに通うことに不安を持っている人もいます。女性は人の目が気になって集中できないとか。例えば、運動したことがほとんどない女性が、マシンをガンガンやってるマッチョな男や、痩せてきれいな女性がいるジムには、「私は笑われる」と思って、行けない。僕のところでは人目を気にせず練習できる、相談もできる。そこがメリットと思って来てくださる人もいます。
パーソナルトレーニングの相場から言うと高くはないんですけど、それでもそこそこの金額をいただくので、こちらもみなさんそれぞれが続けられるようメニューを細分化して、「これなら私にも出来るかな」と思っていただけるものを提供してます。
松野:きれいで健康な「体」が手に入るなら、お金には換算できないけどね。
パッション:それで、僕は3ケ月メニューの後も体型維持のためのアフタープランに力を入れてます。アフターは同じメニューでやられても、月1回とペースを落としても、それぞれでいい。自分で出来るとなれば晴れて卒業されていいし、ハマッて通い続けてくれる方もいますよ。今までは3ケ月のメニューが終わると僕もお客さんも寂しかったけど、独立した今は、もうちょっとパッションのところでやりたいな、と思ってもらえる“いい関係”を作っています。誉めながらも「もっとがんばろう!」とか「食べすぎただろ!」と叱ったりとか。逆にストイックな方には「もっと厳しいトレーニングください!」とか言われますよ。「まだやれるのか!」と驚くこともある。僕が情熱をもって提示したメニューに対して、同じ“情熱”で返してくれると、僕も嬉しいっすね。
松野:情熱! パッション屋良が個別指導するわけだからおもしろいトレーナーなわけでしょ?(笑)
パッション:まあまあまあ(笑)。この仕事やるためにお笑い芸人やってたのかなって勢いです。
今後の夢
松野:昨年は、痩せマッチョのボディビル「ベストボディ・ジャパン2016日本大会」に沖縄代表として出場したそうですが、今後、芸人活動やジム以外にやりたいことは?
パッション:マスターズ陸上に出ようかなと。夢が1つありまして、20~30年後に世界記録保持者になりたいんです。円盤投げかハンマー投げでは国体目指してたんですが、シニアのマスターズがあるから、オーバー65歳とか70代の世界大会ならいけるんじゃないかと。変な話、90歳以上の100メートル走でおばあちゃんが世界チャンピオンになったりするじゃないですか。これって90代で走れる人なら誰でもチャンスがあるんですよ。
松野:参加選手の絶対数が少ないでしょ。
パッション:確かに(笑)。今、僕が同年代の陸上の元アスリート相手に勝てっこないので、20年30年と僕がコツコツ練習して、すごいアスリートがどんどん体力落ちた60~70代になった頃なら、もしかたら世界チャンピオンになれるぞ! と。円盤投げとハンマーの参加者は少ないから、金メダルを狙いたい。ははは!
松野:四半世紀かけた壮大な夢! シニアのハンマーは室伏選手が10連覇してたりして。
パッション:もうやらないでしょ(笑)。やってても70代の時は僕が勝てるかもしれないですよ。勝負はやってみなければわからない。体力があれば高齢だって何でもできる、生活の幅が広がるんだという見本に僕がなれたらと思ってます。それが夢。「あいつ、70歳なのにまだ胸叩いて、いい胸板してる!」って思われたら、その時に“パッション屋良”の価値が上がるのかなと。
沖縄にはプロスポーツ選手が合宿でたくさん来るから、そのうちアスリートがPPPに通い始めるんじゃないか?
最後に何気なくそう振ると、笑っていたパッション屋良さん。案外、そんな日が遠くないかも?
タレント業と並行してジムを立上げ、精力的に活動する彼は、本物の“筋肉芸人”。健康番組や体育系番組が多いテレビから今後は声がかかるだろう。苦労や経験を経て、自分に合った仕事と理想的なボディをつかんだパッション流の生き方と体作りは、沖縄の男たちのためになるヒントがある。
(構成=松野大介)
<パッション屋良プロフィール>
本名:屋良朝苗(やら・ちょうびょう)76年7月生まれ。沖縄県名護市出身。国士舘大学体育学部卒後、芸人活動に。「笑いの金メダル」(朝日放送)などでブレイク。沖縄に拠点を移してからはタレント業と並行してパーソナルトレーナーを務め、17年4月に独自のパーソナルジム「Passion’s Fitness 【PPP】~Personal Physical Planning~」を開く。
Passion’s Fitness 【PPP】~Personal Physical Planning~
ホームページはこちら → http://passions-fitness.com
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