- 2016-12-15
- Women
県外の人から見れば意外と思うかもしれないが、沖縄の人は驚くほど海には入らない。さぞかし、ダイビングやシュノーケリング、その他様々なマリンレジャーを、日々、満喫しているように思うかもしれないが、沖縄県人にとって海は、バーベキュー、いわゆるビーチパーリーをやる場所なのである。かく言う筆者も沖縄に移住して来た当初こそ海に入ったが、ここ数年はめっきり海の中には入っていない。
いつも身近にあって、いつでも手に入ると思うからこそ、それへの興味は薄れ、その素晴らしさや有り難さを忘れがちになるというのは、どこの地方にもあることかもしれない。失ってから、或いは失いかけてはじめて、そのかけがえのない価値がわかるということはよくあることだ。
沖縄の珊瑚礁が悲鳴を上げている!
沖縄には、そのかけがえの無い自然と美しい珊瑚礁の海がある。ところが今、その珊瑚礁が危機に瀕しているのだ。地球温暖化による海水温の上昇をはじめ、大型台風の襲来、赤土流入などの環境汚染、オニヒトデの大量発生、さらに過剰な観光利用や海洋生物の乱獲など・・・、様々な要因により、沖縄周辺の珊瑚は危機的な状況に陥っている。最新の調査では、石垣島と西表島の間にある国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」で大規模な白化現象が認められ、少なくとも一部白化したサンゴが97%に達し、死滅しているものが56%に上ることが分かったという。※環境省那覇自然環境事務所 2016年8月31日報道発表資料「石西礁湖の珊瑚発火減少の調査結果について」より
http://kyushu.env.go.jp/naha/pre_2016/post_22.html
珊瑚礁の減少や絶滅は、単に美しい海が失われるというだけではなく、地上も含めた地球環境全体にとっても重大な環境変化を及ぼすということは、すでに様々な研究発表や報道などでご存知の方も多いと思う。そしてようやく今、行政、研究機関、企業、団体から個人に至るまで官民挙げて様々な対策を講じようとしているところである。
前置きが長くなったが、今回、お話を伺ったWomenは、そんな珊瑚礁保全のために他とはまったく違った独自のアプローチで取組んでいる呉屋由希乃さん。目鼻立ちのくっきりとした顔立ちに黒髪が美しい、典型的なウチナー(沖縄)美人である。彼女は今「サンゴに優しい日焼け止め」という新しい商品を作ることに情熱を傾けている。まずは、それを作ろうと思ったきっかけから聞いた。
「サンゴが死んじゃうよ」の一言に、衝撃をうけた
他の沖縄の人と同様、随分と大人になってから、久しぶりに座間味島にシュノーケリングに行ったときのこと。当然のように日焼け止めを塗った身体で海に入ろうとしたところ、ダイバーの人にいきなり注意されたという。最初何のことがわからずにきょとんとしていると「あなたが塗りたくっているその日焼け止め、珊瑚にダメージを与える成分がたっぷり含まれているのよ。サンゴが死んじゃうよ。」と言われ、はっとしたそうだ。沖縄に生まれ育ち、海が大好きのはずだったのに、その海を知らずとはいえ傷つけていたなんて・・・。海が大好きなのに、実は海についてまったく無知だったことに愕然とし、そんな自分を恥じた。
こうして強いショックを受けた彼女だったが、次の行動は早かった。「サンゴに優しい日焼け止めを作ろう!」もともと考えるより行動が先に出る性格という彼女は、さっそく商品づくりのための行動を起こすべく、片っ端から友人、知人にその思いを訴え、協力者やアドバイスを求めたという。そうしてたどり着いたのがクラウドファンディングという方法だった。
クラウドファンディングページはこちら→ https://faavo.jp/naha/project/1451#pj-single-nav
それはサイエンスではなく、食堂のおばちゃんの料理づくりみたいなもの
クラウドファンディングで資金調達はスタートさせたものの、実際のその商品研究開発には、相当な専門知識や、しかるべき研究機関や製造工場などが必要だと思うが、それはどうなのかと訊ねると、あっけらかんと「商品研究については、ほとんど独学ですね」と彼女は笑う。ネットで調べたり英語で書かれた論文を読みあさって自分で研究してると。ただ英語はNYでの生活経験もあり多少は自信があったが、専門用語ばかりの論文や学術書を理解するためにかなり勉強が必要で、ずっと睡眠不足が続いたらしい。
「でも私が作っているのは、コンビニの弁当ではなくて食堂のおばちゃんが作っている料理なんです」つまり普通の化粧品やコンビニの弁当は様々な添加物やケミカルの配合を考えるサイエンスだが、これは自然の素材を足したり引いたりしていくシンプルな作業で、どちらかというと食堂のおばちゃんが作る料理みたいなものという。
イスラエルの環境バイオテクノロジー研究の教授からの応援!
そうこうしてるうちに、イスラエルの環境バイオテクノロジー研究所の所長であり教授から連絡が届くという奇跡が起こる。「サンゴに優しい日焼け止め」の運動は、アメリカでも、この論文を書いたチームを中心に始まっており、「私と同じことを訴えている!」と意を強くして、SNSにアップした動画がきっかけだった。そして先日、ハワイで行われた、IUCN(国際自然保護連合)のプレスカンファレンスにおいて「珊瑚に優しい日焼け止め」の必要性を訴えてくれた他、ハワイ州議会議員からも、有害物質を含む日焼け止めの販売停止と珊瑚に優しい日焼け止めの販売を推奨し、ハワイが世界の海と珊瑚の保全をリードしていくべきだとの意見も述べられたそうだ。その教授とは、現在もメールで情報交換したり、意見を求めたりの関係が続いている。
これにより沖縄が、座間味が、ハワイと並び、世界の“海モラル”をリードしていけるのではという壮大な夢も現実のものとして捉えられるようになったと言う。また下のプレスカンファレンスでの動画により、このプロジェクトを説明する上で、特に偉い人たち(政治家とか行政の要人とか大企業の社長さんなど(笑))へは、大いに説得力を増した。
ハワイで行われた、IUCN(国際自然保護連合)のプレスカンファレンスの様子
クラウドファンディング目標達成!さらにストレッチゴールを目指す!
こういった強力な後押しも得ながら、彼女の精力的な活動努力の甲斐もあり、見事クラウドファンディングの目標額は達成された!そして現在、さらにストレッチゴール(期間延長による上乗せ目標)を目指し、テレビ・ラジオ出演や各種媒体の取材対応、県内外はもちろん、宮古、石垣といった離島にまで奔走している。人から人へ、紹介とツテを頼りに一人でも多くの人に伝えようと駆け回っている。ストレッチゴールの締切は2016年12月28日、読者の皆様もぜひ応援してあげてほしい。
WEBテレビ番組「ホウドウキョク」に出演の映像はこちら↓
https://www.houdoukyoku.jp/archives/0009/chapters/26314
このバイタリティの根源はどこから?
ところで、彼女のこのバイタリティはどこから来るのだろうか。女性に年齢のことを聞くのは野暮なので、ここで少しだけ彼女の経歴について触れたい。沖縄の大学を中退後、東京へ出た彼女は、パーティイベントプロデュースや撮影コーディネイトをするという職に就く。コーディネイターと言えば聞こえは良いが、実際には、タレントのブッキングから会場手配、チケット販売からチラシ配りまでありとあらゆることをこなす何でも屋。しかしそれが、自然と彼女に交渉力やプレゼン力、さらに事業計画作成の手順や知識など、トータルスキルを高めることになる。その後、ニューヨーク移り住みネットマーケティングのノウハウを学ぶ。3年後、リーマンショックを機にスローライフと起業の両立を目的に沖縄へ戻り、アメリカのフォーマルスタイルを沖縄の女性に提案するブティックをオープン。さらに2014年には、沖縄素材をフィーチャーした欧米向けのヘルス&ビューティブランド「ウィズアウトスキンケアジャパン」として商品を開発し、沖縄で起業。とにかく考えるより行動が先走ると言って笑う彼女は、その屈託の無い笑顔や容姿の美しさはもちろん、コミュニケーション力の高さも相まって、男女問わず誰からも好かれる魅力を持った女性である。そして、そんな彼女の魂を突き動かしたのが「サンゴが死んじゃうよ!」の一言であり、この珊瑚に優しい日焼け止めを作る!といった誰もやらなかった新しいプロジェクトに邁進することになるのである。
だれもが出来ること、“今”海に入ろうとする人が、“すぐに”できること
珊瑚保全問題に話を戻そう。珊瑚礁に限らず、今、地球上のあらゆるところで環境問題が深刻化しており、あまり興味の無い人でも何となく危機感を感じるようになっているのではないだろうか。しかしながら、環境のために自分が何が出来るのだろうと顧みたとき、果たして即座に行動できる人がどれほどいるのだろう。沖縄の珊瑚の問題にしても、海に潜って珊瑚の苗を植え付ける活動や研究、ビーチクリーン活動などが盛んに行われており、メディアでもそれを大々的に取り上げている。ところが、かえってそれが一般の人を積極的な行動から遠ざけているという側面があるようにも思える。いつのまにか、それが何か崇高な活動のように祭り上げられ、特別な人たちがやることであり、普通の人が簡単に行うには少々ハードルの高いものに感じさせてしまってはいないだろうか。
彼女が考えるこのプロジェクトは、もっと簡単に、事前の準備や覚悟もいらず、“今”海に入ろうとする人が、“今”できること。“すぐ”できることなのだ。普通に当たり前のように誰でもできることなのだ。今から沖縄の海に入る人が、沖縄のビーチハウスで購入したサンゴに優しい日焼け止めを塗って、沖縄のサンゴの海に入る。このシンプルさが大事だと彼女は語る。そうすることによって、より多くの人がこの問題を知り、誰もが参加できる活動になればいいと訴える。
防水ポーチのデザインを手掛けるのは沖縄出身のアーティスト pokke104さん
クラウドファンディング協力者への返礼として渡す予定の防水ポーチ
やさしさは強さだ
彼女と話していると時間を忘れる。それは彼女の情熱あふれる話の内容によるところ大であるが、それ以上に、ウチナーグチ(沖縄訛り)を隠すこと無く、言葉は選ぶが決して飾らずに語る彼女の真っ直ぐさと、おおらかに包み込むようなやさしさを感じるからだろうか。やさしさは時に弱みになることがあるが、彼女が持つやさしさはまぎれもなく強さである。人の心を掴み、強力に引き込む力がある。
閑話休題として、男性の好みについて話題をふってみると、やはり彼女はやさしい男が好きだと、あっさりと答えた。沖縄の男性は絶対的にやさしさを持っている。それが沖縄の男性の魅力だし、強みだからもっと自覚するべきとも言った。男性の読者諸君、なんとも説得力のあるアドバイスではないか!
時間を忘れるほど、大幅に予定時間を超えた取材を一旦終え、ビーチに出かけて撮影した。ファインダー越しには、夢の実現に向かって覚悟を決めて突き進む、凛とした大人の女性の姿があった。と同時に、少女のようにピュアな表情を見せる可愛い女性の姿もあった。まったくもって魅力的な女性である。
<呉屋 由希乃さんプロフィール>
YUKINO GOYA
1979年 沖縄生まれ O型 乙女座
20代前半は東京でのパーティプロモーター、撮影コーディネーターなどコーディネート業に従事し、26歳でNYに移住。3年後、リーマンショックを期にスローライフと起業の両立を目的に沖縄へ戻り、アメリカのフォーマルスタイルを沖縄の女性に提案するブティックをオープンし8周年を迎える。アメリカ人医師が沖縄の長寿を研究した本「THE OKINAWA PROGRAM(ザ沖縄プロブラム)がNYや他海外でもベストセラーになったことを知ったことがきっかけでNY在住中に考えていた、海外に沖縄の美容健康法を広める事を考えプロジェクトに着手。2014年、沖縄素材をフィーチャーした欧米向けのヘルス&ビューティブランド「ウィズアウトスキンケアジャパン」として商品を開発し沖縄で起業。2015年、座間味島の海でダイバーに「日焼け止め塗ったら、サンゴ死んじゃうよ」と注意されたことがきっかけで、“日焼け止めとサンゴの関係”を調べ始める。「今、対処しないとヤバい」と感じ、事業化に向けて準備、現在に至る。
締切まであとわずか!読者の皆様、500円からできるご支援を!
「サンゴに優しい日焼け止め」クラウドファンディングページはこちら→ https://faavo.jp/naha/project/1451#pj-single-nav
呉屋 由希乃さんFacebookページはこちら→ https://www.facebook.com/ygoya?fref=ts
呉屋 由希乃さん所有「シャンデリアブティック」FBページはこちら→ https://www.facebook.com/cbokinawa/?pnref=lhc
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