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「あきらめない」生き方。俳優・演出家 安泉清貴氏インタビュー

沖縄県の子どものうち3人にひとりが貧困であるとされる現在、音楽劇を通して貧困児童支援を訴える若手演出家に注目が集まっている。

自身も複雑な家庭環境に生まれ育ち、学生時代はいじめも経験したという安泉清貴氏。自らの努力で経験を積み上げ、舞台だけでなく、CM、映画、ドラマにも数多く出演する俳優・演出家の素顔に南口編集長が迫る対談インタビューです。

 

舞台が終わって拍手が起きた瞬間に、認めてもらえたような気がして

編集長:今回演出を手がけられている音楽劇「Creep」にはぼくも以前から注目していたんですが、このプロジェクトに関わることになった経緯をお聞きしても?

安泉:一番大きなところはやっぱり児童支援チャリティイベントというコンセプトに共感を持ったことですね。実はぼくもシングルマザーの家庭に育ってて、父親に一度も会ったことがないんです。小学校の頃には近所の支援施設に行っていたこともあって、そういう自分の経験から、子どもたちになにか伝えたいとずっと考えていたんです。

編集長:そういった幼少時代の経験が今の活動のきっかけになった?

安泉:今回の舞台の内容ともリンクするんですけど、中学までずっと学校でいじめられていて、高校進学して環境が変わるのと同時に、自分を変えたいと一念発起してモデル事務所に所属したんです。

編集長:コンプレックスを強みに変えたわけですね。

安泉:といっても、身長が足りなかったり、経験が足りなかったりで、はじめのうちは全然仕事がなくて。ちょうど同じ時期に祖母が痴呆症になって、自分のことに集中したくてもできない状態だったんですよね。そんなときにたまたま受けたオーディションに受かって舞台に出たんです。ぼくの役は、生徒に勉強を教えているうちにヒートアップして殺してしまう先生で。

編集長:すごい話ですね(笑)。

安泉:ですよね(笑)。役者の経験はほとんどなかったんですけど、役を通して自分自身をぶつけたというか、それまでたまっていたフラストレーションを一気に放出させたんです。舞台が終わったあと、拍手が起きた瞬間に、なにか認めてもらえたような気がして。それまでは人の目を見て話すことさえできなかったのが、舞台を重ねていくにつれて、すこしずつ感情を表に出せるようになっていったんです

編集長:演劇との出会いが自分を解放するきっかけになったんですね。

安泉:3年ほど前に「死角の箱」という舞台を企画・演出したんですけど、その舞台では自分をすべてさらけ出しましたね。認知症の母親を題材にしたもので、実際に自分の家庭で起きたことやそのときの記憶、感情を表現しました。プライベートな部分を全部見せてしまうのは勇気がいりましたけど、作品にこめた思いはきてくれたひとにしっかり伝わったんじゃないかと思います。

 

今の感情だけじゃなくてその先の未来にフォーカスをあてたい

編集長:自ら演じるだけでなく演出のほうも手がけるというのは、やっぱり自分の表現したいことに素直であるため?

安泉:演出をするということに対して、こういった見せ方をしようとか仕掛けをしていこうという考えはあまりなくて。役者が舞台に立つうえで、ストーリーの中で出てくるキャラクターの気持ちに嘘偽りがなければ、その舞台は成功だと思っているんです。台詞という情報よりも、そのひとが感じているものを表現してキャラクターの気持ちが感じられたら、それがいい舞台だと思うんですよ。話そのものはフィクションでつくりものでも、やっているひとは本当の気持ちでやっている。それを見ることで、気持ちのなかに引っ掛かりがあれば、必ず共感してもらえる。当事者の気持ち、つらいとか悲しいとか今の感情だけじゃなくて、その先の未来にフォーカスをあててほしいということを役者には求めています。

編集長:演出家としてのスタイルがすでにできているんですね。

安泉:演出に関してはまだまだ経験不足でいろいろ葛藤もあるんですけど、自分のなかでは、教えてもらうことっていうのは実は近道ではなくて。答えをそのまま受け取るよりもまずは自分でやってみて考えようというスタンスです。周囲から見れば未熟だと思うんですけど、我侭をいうと、見守っていてほしいというか(笑)。

編集長:なるほど。では、演出家ではなく俳優としてはどうでしょう。自分が理想とする俳優像はありますか?

安泉:身内話になってしまうんですけど、福永武史さんという方がいて。那覇に「わが町の小劇場」という劇場を作ってご本人も役者をしているんですけど、このひとの演技が本当に好きなんですよ。演出家がやってほしいことと自分がやりたいことを掛け合わせてさらにそれ以上のものを出せるひとで、一番身近で尊敬できるひとですね。人間的にも魅力的です。

編集長:安泉さんの野望というか(笑)目標も聞いていいですか?

安泉:すごく我侭でガキっぽいんですけど、好きなときに好きなことを思い立ったときにしたいというのがぼくの夢です。あとは「知らないものを知りたい」ですね。狭い沖縄のさらに狭いコミュニティで生きているぼくですけど、もっといろんなことを経験して、一点だけでなく、幅広い目線でものごとが見られるようなひとになりたいなあと思います。

 

お金がないから自分のやりたいことができないといういいわけは絶対したくなかった

編集長:今放送されているオリオンビール「夏いちばん」のCMにも出演されていますね。

安泉:ぼく以外にあとふたり神田青と福地涼という役者が出演してるんですけど、3人で「Hash Tag」という演劇ユニットを組んでるんですよ。

編集長:劇団ではなく演劇ユニットというのは珍しいですね。

安泉:沖縄って、なかなか仕事がなかったりきっかけが作れなかったりということもあって、生産性がある仕事を自分たちで作り出せるようにという考えで結成したんです。インプロ(即興演劇)の舞台でたまたまおなじグループになった3人が意気投合したのがきっかけでした。

編集長:3人とも男前ですね。サザンスタイルのコンセプトはかっこいい男を沖縄に増やすことでもあるから、こういうかっこよくて骨もある男が増えてくれるとうれしいですね。ということで、だれにインタビューするときでも一番最後に質問することなんだけど、安泉さんが思う「かっこいい男」ってどんな人だと思いますか。

安泉:うーん、その質問の答えはぼくにとってはかなり難しいんですよね。父親に会ったことがないから明確な父親像というものがないし、年上の男性と話すこともなかなかなくて。ただ、「いい男」というところでうっすらとあるのが、「どれだけひとのことを思えるか」というところですね。ひととして芯が強いひとが好きです。平凡な毎日を送っているけど家庭を大事にしているひととか。ぼくの同級生も結婚して子供がいるひとも多いですけど、彼らのそういうところをぼくはすごく尊敬しているんですよ。相手のことをどれだけ思っているのかっていうのが見てて伝わってくるから。そこがちゃんと見つめられる人間が魅力的であり理想ですね。

編集長:子どもと大人のちがいはまさにそこですよね。自分のために生きている限りそいつはいつまでも子ども。自分以外のひとのために生きるということができた時点ではじめて大人になれる。それを理解しているかいないかですよね。言葉を変えると品のいい生き方と悪い生き方ともいえるけど。自分のことだけ考えて生きるのは下品ですよ。若くして自分の生きていくうえでの基準がしっかり考えられているのはすごいと思う。あきらめちゃったり流されちゃったりというひとにはなってほしくないですね。たとえば身だしなみとかね。かりゆしウエアでも安いシャツでもいいからきっちりアイロンをかける。シャツは安物でも靴だけはいいものを履く。そういうことも日々自分が生きていくうえであきらめないためのひとつの方法なんじゃないかなと。

安泉:ああ、その言葉すごい響きましたね。ぼくもシングルマザーの家庭で決して裕福ではなかったんですけど、だからといって、お金がないから自分のやりたいことができないといういいわけは絶対したくなくて。これがないとできないというのはすごいコンプレックスなんですよ。そういう人生にはしたくないと思って駆け出したのがスタートなので、今の言葉はちょっと泣きそうになっちゃいましたね。

編集長:そういう「あきらめないひと」がひとりでも多くいれば、世の中変わると思いますよ。

安泉;そうですね。やっぱり伝えたいことは「やればできる」ってことなんですよ。裕福でもないしお金も体力も時間もないぼくが俳優をできるってことはだれでもできる。ぼくより若い世代に「あいつにできるならおれにだってできるぜ」って思われるほうが、「すごいですね」っていわれるよりずっとうれしいですね。

編集長:これからの活動に期待しています。最後にあらためて音楽劇「Creep」への思いを教えてください。

安泉:子どもたちが生きているのは学校か家かというような狭いコミュニティだと思うんです。問題を抱えたとき、どうしても視野が狭くなってしまって、目の前しか見えない。ぼくも実際そうだったんです。その気持ちを経験したけど忘れてしまった大人たちや当事者の子たちに、なにかやってみたいという自分の気持ちを発見してほしい。見たひとたちが「なにかやりたい」、「自分を変えたい」というような気持ちになってもらえたら、それはぼくらにとっても大きな一歩となると思います。ひとつの小さな世界を俯瞰して見ることで、知らない世界が見えてくる。それを映像や写真ではなく生身で伝えていけたらいいですね。必死に汗だくになりながら、ちゃんと伝わるかどうかわからないけど、伝わることを信じて、役者たちは立ち向かっています。8月20日、21日と北谷のモッズで公演がありますので、ぜひ観にきてください。

 

https://pbs.twimg.com/media/C_b7Ce9U0AAiib5.jpg

貧困児童支援特別公演

音楽劇 Creep

【CAST&STAFF】

◎STAFF

脚本:新尾理世

演出:安泉清貴

舞台監督:久保深樹

◎CAST

ルイ:神田青

シュウ:伊佐龍太

ヒカル:福地涼

タツキ:慶田城一斗

ヒトミ:大屋亜梨須

リサ:仲宗根葵

シュンの父:神崎英敏

ルイの母:出口裕子

キーママ:クリスタル・キーマ

【チケット&スケジュール】

◎日程

2017年8月20日(日) 15:00~ 19:00~

21日(月) 15:00~ 19:00~

*開場は開演の30分前

 

◎チケット料金

一般 2000円

高校生以下 1000円

中学生以下無料  すべて1ドリンク別途オーダー

(当日は500円UP)

 

◎場所

ライブハウスモッズ

住所:北谷町美浜9−1 デポアイランドビルE 電話:098-936-5708

◎問合・チケット予約

オフィス・ダッフォ 電話:098-943-0477

◎メール:info@duffo.jp

◎ホームページ http://www.creep.okinawa/

◎Twitter

◎Facebook https://www.facebook.com/creepokinawa/

◎Youtube https://www.youtube.com/channel/UCpQEVQWQ8vD9fuHmq0gmG8g

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